パリ左岸のピアノ工房

パリ左岸のピアノ工房という本を読んだ。

とーっても面白かった。ピアノや音楽に関して、知らなかったことがたくさん書かれていたし、ハゲツル先生の言っていることや、自分がなんとなく感じていることと同じだなあということもいろいろあった。

この本には、著者がパリのあるピアノ工房で出会ったいろんなピアノ(主に古いピアノ)が出て来て、それぞれどんな音なのかなと想像しながら読むのが楽しかった。

うちはグランドピアノを購入する計画はないけど、もしも買うとしたらどんなのがいいかな〜とつい考えてしまう。中古のそこそこいいグランドピアノって、一体いくらぐらいするんだろうなと思って、ハゲツル先生に聞いてみたことがある。6000ユーロくらい出せば、買えないこともないと仰った。「中国製のピアノならば新品でももうちょっと安いけれど、それはオススメじゃないな。でも、ヤマハならいいと思うよ。ヤマハは今ではとってもしっかりした良いピアノだから」って。

ポツダムのピアノ屋さんも一度、覗いてみた。店主の話では、扱っているピアノは新品でも中古でも平均1万4000〜8000ユーロだそうだ。高いですね〜、と私が言ったら、「カワイのピアノはいかがですか?良いピアノですよ」と店主が言う。「いえ、ヨーロッパのピアノがいいんです」と答えると、「どうしてですか?ヤマハやカワイだって、良いピアノですよ。お値段もヨーロッパのピアノの約半額ですから、おすすめですよ」

ヤマハやカワイのピアノは今や世界的ブランドで、評価が高く、信頼もおけるから、良いのだろうと思う。でも、私はどうぜお金を出して買うんだったら、ヨーロッパのピアノがいいなと思ってしまう。先生やピアノ屋さんにはわからないかもしれないけど、私にはそれなりの理由があるの。

私は日本の田舎育ちなので、ピアノというと学校の音楽室や体育館にあるグランドピアノと、友達の家にあるアップライトくらいしか知らなかった。そして、それらはほとんど全部、ヤマハだった。カワイですら、あまり見たことがない。日本ではピアノコンサートに行ったこともほとんどなかったから、スタインウェイの音なんか聴いたことはなくて、私にとってのピアノの音はすなわちヤマハピアノの音。

それが、ドイツに来て、友達の家のピアノ(ホフマンというメーカー)の音を聴いたとき、自分の家のヤマハとのあまりの違いにびっくりした。その後、いろんなヨーロッパ製のピアノの音を聴く機会があって、そのたびに衝撃を受けたり、感動したり、違和感をおぼえたりして、「ピアノって、一台一台違うんだな。それぞれ個性があって、生き物みたいだな」と感じるようになった。

ヨーロッパの人にとって、ヤマハやカワイのピアノは世の中に数多くあるいろんなピアノのうちの一つだから、ヤマハやカワイならではの良さを感じることができるのかもしれない。でも、ヤマハしか知らなかった私には、ヨーロッパのピアノがとても魅力的に思える。

それぞれのピアノが持つ個性にすっかり魅せられてしまったので、今ではピアノを見ると、どうしても触ってみたくなってしまう。よそのピアノを弾くと、人に下手な演奏を聴かれてしまうことになるし、聴かれると緊張して弾けなくなるから絶対に嫌だとずっと思っていたけど、最近、だんだんとどうでもよくなってしまった。「わたしはこのくらい弾けます」ということを示すために弾くわけじゃなくて、ピアノの味見をさせてもらうだけだから、なんと思われたっていいや、と開き直って来た。

町でバイオリンを肩から下げて歩いている人なんかを見ると、「ピアノ以外の楽器を弾く人は、マイ楽器があっていいなあ。その点、ピアノは持ち運びができないし、家族と共有だからなあ」と思うことがあったけれど、逆の考え方をすると、それがピアノのいいところでもあるのかな?人のバイオリンやフルートを貸してと頼んだら、嫌がられる可能性があるけれど、ピアノを触らせてと言われて断る人はあまりいないと思う。だから、ピアノを弾く人は、いろんなピアノに触れるチャンスがあるってことだよね。
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by ongakunikki | 2007-10-24 16:50 | 音楽メモ
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